転身ルート2026-07-21監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

SIer・受託のPM/PLからITコンサルへ転身する完全ガイド——「経験の翻訳」で書類は通る

この記事の要点

「10年SIerでPMをやってきたのに、コンサルの書類でことごとく落ちるんです。何が足りないんでしょうか」

キャリア面談で、この相談を本当によく受けます。皆さまはどうでしょうか。要件定義も、複数ベンダーの調整も、火を噴いたプロジェクトの立て直しも経験してきた。それなのに、応募すると書類の段階で静かに落とされる。実力の問題だと思い込んで、自信を削られていく——そんな状態に心当たりはありませんか。

率直に言うと、この現象の大半は実力不足ではありません。経験の「翻訳」が済んでいないだけです。SIerのPMが日常で使う言葉と、ITコンサルが評価する言葉は、同じ日本語なのに別の通貨です。両替せずに持ち込むから、額面が伝わらない。落ちているのは経歴ではなく、経歴の書き方なのです。

この記事では、SIer・受託開発のPM/PLがITコンサルへ転身するとき、経験をどう翻訳し、書類と面接で何を語るかを、僕が面談で使っている手順のまま整理します。特に知名度のない中小・ブティックコンサルは、経歴のブランドより中身の再現性を見ます。だからこそ、翻訳が効くのです。

0. 前提——なぜ「翻訳」という言葉を使うのか

転職支援をしていて痛感するのは、SIerのPMほど「自分の経験を安売りしている人」が多いという事実です。20年分の実績を持っていても、それを進捗表と障害対応の言葉でしか語れないと、コンサルの採用担当には「作業をこなしてきた人」にしか見えません。

そこで僕が面談で使うのが「経験の翻訳」という考え方です。社内で勝手にそう呼んでいるだけなんですけど、要は、SIerの現場語で書かれた実績を、コンサルの評価語に一つずつ両替する作業です。「進捗を管理した」→「不確実性の高い状況で意思決定の順序を設計した」。「顧客と調整した」→「利害が対立する関係者の合意を、根拠を示して形成した」。中身は同じ出来事なのに、翻訳後は評価軸に乗る。ここが今回の隠れた主役です。

1. 書類で落ちる本当の理由——三つの誤訳

まず、なぜ落ちるのか。僕が数多くの職務経歴書を見てきた体感で言うと、SIer出身者の書類には共通する三つの「誤訳」があります。

一つ目は主語の誤訳。「チームで」「組織として」と書いてしまう癖です。SIerは組織で動く文化なので自然な言い回しなのですが、コンサルの面接官が知りたいのは「あなたが何を判断したか」の一点。組織主語の実績は、読み手には誰の手柄か分からず、評価のしようがありません。

二つ目は動詞の誤訳。「管理した」「対応した」「推進した」という受け身寄りの動詞が並ぶこと。これらは作業の言葉で、判断の言葉ではありません。三つ目は成果指標の誤訳。「納期を守った」「品質基準を満たした」で止まってしまう。守って当たり前のものを実績の頂点に置くと、それ以上の思考が無かったように読まれます。

1-1. 誤訳を正す一行——「守った」の先に「なぜその判断か」を足す

直し方はシンプルです。実績の一行ごとに「なぜその判断をしたのか」を一節足すだけ。たとえば「炎上案件を立て直し、納期を守った」で止めず、「スコープの何を削り、何を守るかを、顧客の事業インパクトを基準に自分で線を引いた」まで書く。守った事実より、線を引いた判断のほうが、コンサルでは何倍も高く売れます。

1-2. よくある失敗——資格と技術スタックを冒頭に置く

面談でよく見るのは、職務経歴書の冒頭にPMPや情報処理資格、扱った言語やフレームワークをずらりと並べるパターンです。SIerの世界ではこれが名刺代わりになりますが、コンサルの書類では順番を間違えると損をします。先頭に置くべきは、担当した案件の「課題の質」と「あなたが下した判断」。技術スタックは、それを支える裏付けとして後ろに添えれば十分です。

2. 評価される経験の翻訳表——SIer語からコンサル語へ

ここで、実際の両替レートを表にします。これは統計値ではなく、僕が面談と選考支援の現場で使っている翻訳の目安です。

SIerでの言い方(現場語)コンサルでの言い方(評価語)
要件定義をまとめた曖昧な業務課題を構造化し、論点を切り出した
ベンダーと顧客を調整した利害対立を、事業インパクトを根拠に合意形成した
進捗を管理した不確実性の高い状況で意思決定の順序を設計した
納期・品質を守った制約下で守るべき価値の優先順位を自ら判断した
提案書を書いた顧客の投資判断を動かす論理と根拠を組み立てた

大事なのは、これは嘘の盛り方ではないということです。SIerのPMは、実際にこれらの思考を毎日やっています。ただ、成果物の名前でしか記録していないから、思考が見えなくなっているだけ。翻訳とは、すでにやったことに正しい名前を付け直す作業です。

2-1. 「上流」を持っている人ほど翻訳の伸びしろが大きい

僕の見立てを率直に書きます。受託開発のPM/PLの中でも、要件定義や提案フェーズに深く関わってきた人ほど、コンサルへの翻訳レートが高い。なぜなら、その工程はコンサルの仕事の骨格とほとんど同じだからです。顧客の言語化されていない困りごとを聞き取り、論点に分解し、打ち手の選択肢を並べ、投資対効果で優先順位をつける——これを日常でやってきた人は、職種名が違うだけで、実質すでにコンサルの前半を担っています。

3. 面接での語り方——「判断の跡」を一人称で出す

書類が通った先の面接で、SIer出身者が最も試されるのは「その判断は、あなたが下したのか」という問いです。

コンサルの面接官は、あなたの意思決定の解像度を見ています。ここで組織主語に逃げると、途端に評価が落ちる。逆に、対立する関係者の構図を描き、何を根拠に、どちらを選び、結果どうなったかを一人称で語れると、SIerの経歴でも一気に本命候補になります。技術の深さを問われているのではありません。判断の跡が言語化できるかを問われているのです。

3-1. 弱みの聞かれ方——技術より「型に頼る癖」を突かれる

誤解がないように申し上げると、面接で突かれる弱点は技術力ではないことが多いです。SIerの大規模開発で染みついた「決められた手順が降りてくるのを待つ」「役割の線を引く」という習慣を、コンサルは警戒します。ここは正直に、「標準化された環境で強みを発揮してきたぶん、白紙から論点を立てる訓練はこれからだと自覚しています」と認めたうえで、直近で自分から動いた小さな実例を添える。弱みを隠すより、自覚と改善の跡を見せるほうが、この職種では信頼されます。

3-2. 中小・ブティックだからこそ効く語り方

知名度のない中小・ブティックコンサルの面接は、大手ほど地頭テストに寄りません。むしろ「入って即戦力で回せるか」を具体で見ます。ここではSIerで培った現場の泥臭さ——障害を収束させた経験、無理な要求を捌いた経験——が、そのまま武器になります。大手の看板がないぶん、候補者の中身をフラットに見てくれる。書類スペックで大手に弾かれた人が、構造で選び直すと届くのは、この層です。

4. 実務パート——今日やる「翻訳の棚卸し」30分

最後に、今日30分でできる手順を置きます。白紙のメモを3枚用意してください。

1枚目(10分):過去3年で「自分が判断の分かれ道に立った場面」を3つ書く。何と何で迷い、何を根拠に、どちらを選んだか。組織ではなく自分を主語にすること。これが面接で使う一級品の在庫です。2枚目(10分):その3場面を、第2章の翻訳表を横に置いて評価語に書き換える。「調整した」を「合意形成した」に、機械的でいいので両替する。3枚目(10分):直近で「誰にも言われていないのに自分から動いた」小さな実例を1つ。これが弱みを聞かれたときの切り返しになります。

この3枚ができたら、職務経歴書の一行目を、資格や技術スタックから「課題の質と自分の判断」に差し替えてみてください。同じ経歴が、まるで別人の経歴に見えるはずです。

5. 結び——経歴は変えられないが、額面は書き換えられる

SIerで積んだ10年は、もう書き換えられません。でも、その10年をどの通貨で記録するかは、今日から選べます。進捗管理の言葉で安売りするのか、判断と課題定義の言葉で正しい額面をつけるのか。僕の見立てでは、翻訳を済ませたSIer出身のPMは、知名度で選ばれる大手ルートより、中身で選ぶブティックルートのほうがはるかに通ります。小規模コンサルは、知名度がないだけで、中身は構造で読めば大手を上回ることが多いからです。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずはご自身の経験が、コンサル市場でどう翻訳されるかを客観視するところから。コンサル適性診断(5分)で現在地を測ってみてください。それでは、コンサルクエストでは今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. SIerのPM経験はITコンサルの書類選考で評価されますか?

評価されますが、書き方次第で通過率が大きく変わります。ITコンサルが見たいのは「納期・品質を守った」実績ではなく、「顧客の曖昧な課題をどう構造化し、どんな判断で前に進めたか」という思考の跡です。同じPM経験でも、進捗管理の言葉で書くと減点、課題定義と意思決定の言葉に翻訳すると加点されます。特に中小・ブティックコンサルは経歴の知名度より中身の再現性を見るため、翻訳がうまくいけば大手出身でなくても十分に通ります。

Q. SIerからITコンサルに移ると年収は上がりますか?

上がる可能性が高い一方、入口の等級次第で一時的に横ばい〜微減もあり得ます。目安として、SIerのPM層(600〜800万円台)が業務・ITコンサルに移ると、シニアコンサル〜マネージャー入口で700〜1,000万円台に乗るケースが多いという体感値です。ただしブティックは昇格スピードが速く単価に直結する構造のため、2〜3年での伸び幅は大手より大きくなることが珍しくありません。

Q. 未経験でITコンサルに応募して面接で一番聞かれることは何ですか?

「その判断は、あなたが下したのか」という一点です。SIerのPMは組織の手順に沿って動くため成果を組織主語で語りがちですが、面接官は個人の意思決定の解像度を見ています。対立する利害を、何を根拠に、どう裁いたかを一人称で語れるかどうかが合否を分けます。技術の深さより、判断の跡の言語化が評価軸です。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

あなたのPM経験は、コンサル市場でいくらに翻訳されるか。

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