転身ルート2026-07-21監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

社内SE・情シスからコンサルタントへ——「事業会社側の当事者経験」が武器になる転身戦略

この記事の要点

「ずっと社内SEだったので、コンサルなんて別世界の人たちの仕事だと思っていました」

面談でこう話される情シス・社内SEの方が、驚くほど多い。皆さまはどうでしょうか。基幹システムの刷新も、SaaS導入も、セキュリティ対応も、現場の抵抗を宥めながら通してきた。それなのに「自分はコンサルに語れるほどの専門性がない」と、応募すらしないまま可能性を閉じてはいないでしょうか。

率直に言います。それは、自分の一番の武器を無自覚に捨てている状態です。社内SE・情シスが持つ「発注側で、当事者として、導入を最後まで通した経験」は、コンサル市場ではむしろ希少資産です。多くのコンサルタントは支援側の立場しか知りません。予算を握る役員をどう説得したか、現場のどんな抵抗をどう解いたか、稼働後に何が起きたか——その肌感覚を持つ人は、支援側にこそ足りていないのです。

この記事では、社内SE・情シスからコンサルへ転身するとき、当事者経験をどう武器化し、書類と面接で何を語るかを、僕が面談で使っている視点で整理します。

0. 前提——「支援側」と「当事者側」は別の資産である

コンサル転職を考える情シスの方がまず知るべきは、キャリアの資産が二種類あるという事実です。一つはコンサルが得意な「支援側の資産」——分析、資料化、論点整理。もう一つが、事業会社側にしかない「当事者側の資産」——予算を通した経験、現場を動かした経験、失敗を引き受けた経験です。

僕が面談で「当事者経験」という言葉をよく使うのは、この二つ目が過小評価されがちだからです。コンサルは提案して去る立場ですが、事業会社の情シスは提案の後も現場に残り、使われ続けるシステムの面倒を見ます。この「あとに残る側の視点」は、いくら地頭が良くても支援側だけを経験してきた人には手に入らない。ここが今回の隠れた主役です。

1. 落ちる理由——「運用担当」に見えてしまう書き方

社内SEの書類がコンサル選考で埋もれる原因は、経験の質ではなく、見え方にあります。僕が数多くの経歴書を見てきた体感で言うと、共通するのは「受け身の運用担当」に読めてしまう書き方です。

「システムの保守運用を担当」「ヘルプデスク対応」「ベンダー管理」——これらは事実でも、コンサルの採用担当には「言われたことをこなす人」に見えます。実際にはその裏で、限られた予算をどこに張るか判断し、経営に投資対効果を説明し、抵抗する現場を巻き込んでいたはずです。その意思決定の跡が、成果物の名前に隠れて見えなくなっている。落ちているのは経験ではなく、経験の記述なのです。

1-1. 直す一行——「担当した」を「判断した/動かした」に変える

直し方は、動詞を替えることです。「基幹刷新プロジェクトを担当」で止めず、「刷新の投資判断を経営に上申し、3部門の要求が対立する中で優先順位を自ら決めた」まで書く。担当した事実より、判断し人を動かした跡のほうが、コンサルでは何倍も高く評価されます。

1-2. よくある失敗——技術の網羅性で勝負しようとする

面談でよく見るのは、扱ったシステムや製品名を延々と並べて専門性を示そうとするパターンです。情シスの世界ではこれが実力の証明になりますが、コンサルの書類では逆効果になりがちです。コンサルが見たいのは製品知識の広さではなく、「その導入で、あなたが組織の何を変えたか」という変革の実績。技術の網羅は、変革を支えた裏付けとして一行添えれば足ります。

2. 当事者経験の翻訳表——情シス語からコンサル語へ

ここで、実際の両替レートを表にします。これは統計値ではなく、僕が面談と選考支援で使っている翻訳の目安です。

情シスでの言い方(現場語)コンサルでの言い方(評価語)
システム導入を担当した業務変革を、当事者として企画から定着まで通した
予算を管理した限られた投資枠の配分を、事業インパクトで判断した
現場からの要望を調整した抵抗する利用部門を巻き込み、合意を形成した
ベンダーを管理した発注側として、外部の成果物の品質を評価・統制した
経営に報告した投資判断を動かす論拠を、経営目線で構造化した

これは盛っているのではありません。情シスの仕事は、実際にこれらの判断の連続です。ただ、成果物や役割の名前でしか記録していないから、判断が見えなくなっているだけ。翻訳とは、すでに担ってきた意思決定に、正しい名前を付け直す作業です。

2-1. DX推進・PMO経験を持つ情シスは翻訳レートが特に高い

僕の見立てを率直に書きます。情シスの中でも、全社のDX推進や社内PMOに関わってきた人は、コンサルへの翻訳レートが際立って高い。なぜなら、複数部門をまたいで課題を整理し、経営と現場の板挟みを裁く仕事は、コンサルのプロジェクト運営とほぼ同じ骨格だからです。しかもそれを「自社のために本気で」やってきた当事者意識は、契約で動く支援側には出せない厚みになります。

3. 面接での語り方——「発注側で見た景色」を出す

面接で社内SE出身者が最も差別化できるのは、「発注側でしか見えない景色」を具体で語れる点です。

たとえば、コンサルが提案したきれいな絵が、現場でどう空回りしたか。ベンダーの見積もりの、どこに事業会社として不信を感じたか。導入後、想定と違う使われ方をされて何を学んだか。こうした話は、支援側だけを経験してきた面接官には持ちようがない引き出しです。あなたが受けてきた側だからこそ、良いコンサルと悪いコンサルの差を、肌で知っている。それを語れると、面接官は「この人は現場が分かっている」と一気に信頼します。

3-1. 弱みの聞かれ方——「一社しか知らない」を突かれる

誤解がないように申し上げると、情シス出身者が面接で突かれやすいのは「事例の幅の狭さ」です。一社の中で深く経験してきたぶん、業界横断の引き出しは支援側に見劣りします。ここは隠さず、「自社という一社を深く知る当事者目線が強みで、横の事例はこれから急速に吸収したい」と正直に立てるのが良い。深さと幅は交換ではなく足し算だと示せば、弱みは伸びしろに変わります。

3-2. 中小・ブティックだからこそ効く当事者目線

知名度のない中小・ブティックのITコンサルは、伴走型・領域特化型が多く、顧客に深く入り込んで一緒に手を動かします。ここでは「使われ続けるシステムを見てきた」情シスの当事者目線が、そのまま強みになります。提案して去る大手とは違い、定着まで面倒を見る文化だからです。書類スペックで大手に弾かれた人が、構造で選び直すと最も活きるのは、この層です。

4. 実務パート——今日やる「当事者エピソードの棚卸し」30分

最後に、今日30分でできる手順を置きます。白紙のメモを3枚用意してください。

1枚目(10分):過去に「自分が旗を振って組織を動かした導入」を3つ書く。誰の抵抗を、何を根拠に、どう解いたか。自分を主語にすること。これが面接の主戦力です。2枚目(10分):発注側として「コンサルやベンダーを見ていて感じた良し悪し」を3つ書く。これはあなたにしか語れない差別化エピソードです。3枚目(10分):「一社しか知らない」弱みへの切り返しを1行。深く知る強みと、これから広げる意欲をセットで書く。面接で弱みを問われたとき、これがそのまま誠実な回答になります。

この3枚ができたら、職務経歴書の一行目を「保守運用担当」から「業務変革を通した当事者」に差し替えてみてください。同じ経歴が、別の価値に見えてくるはずです。

5. 結び——「受けてきた側」だから、良い支援が分かる

社内SE・情シスで積んだ経験は、支援側の華やかさはないかもしれません。でも、あなたは発注側で当事者として、導入の成功も失敗も引き受けてきた。その景色は、コンサル市場では買えない希少資産です。僕の見立てでは、当事者経験を正しく翻訳できた情シス出身者は、知名度で選ぶ大手ルートより、伴走を旨とする中小・ブティックルートで最も光ります。小規模コンサルは、知名度がないだけで、顧客に深く入る中身は構造で読めば大手を上回ることが多いからです。

皆さんいかがでしたでしょうか。まずはご自身の当事者経験が、コンサル市場でどう評価されるかを客観視するところから。コンサル適性診断(5分)で現在地を測ってみてください。それでは、コンサルクエストでは今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 社内SE・情シスの経験はITコンサルで評価されますか?

評価されます。むしろ発注側・事業会社側で当事者として意思決定してきた経験は、コンサル側にとって希少資産です。多くのコンサルタントは支援側の立場しか知らないため、社内の予算折衝・現場の抵抗・経営への説明といった「実際に導入を通した」当事者の肌感覚を持つ人は重宝されます。ただし『受け身の運用担当』に見える書き方だと埋もれるため、意思決定と巻き込みの実績として翻訳する必要があります。

Q. 社内SEはコンサルの激務についていけますか?

働き方はファームやプロジェクトで大きく異なります。大手のハード案件は確かに負荷が高いですが、中小・ブティックのITコンサルは常駐伴走型や特定領域特化型が多く、事業会社出身者が現実的に移行できるペースの案件も少なくありません。むしろ社内SEが持つ『納期後も使われ続ける前提でシステムを見る』当事者目線は、短期で去るコンサルに欠けがちな視点として評価されます。

Q. 情シスからコンサルに移ると年収はどうなりますか?

上がる可能性が高いです。目安として、事業会社の情シス層(500〜700万円台)が業務・ITコンサルに移ると、入口で650〜900万円台に乗るケースが多いという体感値です。事業会社側は給与テーブルが職務等級で頭打ちになりがちですが、コンサルは単価と等級が連動して伸びるため、当事者経験を武器に評価されれば数年で差が開きます。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

あなたの当事者経験は、コンサル市場でいくらに評価されるか。

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