働き方の実態2026-08-25監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

コンサルの残業・激務の実態——デリバリー型と会社フェーズで働き方は変わる

この記事の要点

「御社の求人、『裁量あり・成長環境』と書いてありますけど、これって要するに激務ってことですよね?」——先日、SIerで受託PMをされていた方との面談で、開口一番そう聞かれました。

結論から言うと、コンサルティングファームが激務かどうかは、会社の規模や知名度ではほとんど決まりません。僕が現場で見てきた実感で言うと、決め手になるのは『デリバリー型』と『会社フェーズ』の掛け合わせです。同じ『コンサル』という肩書きでも、クライアントの意思決定に伴走する型と、常駐してPMを代行する型では、残業が発生する構造がまるで違います。そしてこの構造を知らずに『大手だから激務、ブティックだから楽』といった単純な図式で会社を選ぶと、入社後に大きなギャップに苦しむことになると僕は考えています。

0. 結論:激務かどうかは会社名でなく「構造」で決まる

先に僕の結論をお伝えします。同じ社員数30名前後のブティックファームでも、要件定義から伴走してクライアントの意思決定を支援する型のところと、常駐してPMOやPM業務を代行する型のところでは、月間の残業の体感値が2倍近く違う、というのが僕の観察です。前者は繁忙期にスパイクが立つものの平常時は比較的落ち着いており、後者はクライアント先の稼働ルールにそのまま巻き込まれるため、慢性的に残業が発生しやすい傾向があります。会社の規模や知名度だけを見て『激務そう』『楽そう』と判断するのは、正直かなり危険だと僕は思っています。

1. まず「残業」を定義する——何と何を比較しているのか

激務かどうかを語る前に、まず『残業』の定義をそろえる必要があります。僕が面談で必ず確認しているのは次の3点です。

この3点をそろえずに『激務ですか?』とだけ聞いても、面接官は正直に答えようがありません。僕の体感値で言うと、繁忙期のピークだけを切り取れば、どのファームも一定の激務期間は存在します。問題は、それが年に1〜2回のスパイクなのか、通年で続く常態なのか、という頻度と持続性の違いです。あわせて、みなし残業(固定残業)の設定時間や裁量労働制の適用有無も確認しておくべきポイントです。同じ月40時間の残業でも、みなし残業45時間を超えた分だけ追加支給される会社と、固定給の中に含まれてしまう会社とでは、実際の納得感がまったく違ってきます。僕が過去に見た候補者の中には、みなし残業の時間数を確認せず入社し、後から『固定残業60時間分がすでに給与に含まれていた』と気づいて驚いた方もいました。求人票の額面だけでなく、その内訳を面接段階で聞いておくことを強くおすすめします。

2. デリバリー型別に見る、残業の発生構造

ここからは、僕が実際の候補者の方々からヒアリングしてきた体感値をもとに、デリバリー型別の傾向を整理します。あくまで目安値であり、同じ型の中でも会社ごとに幅がある前提で読んでください。

デリバリー型残業が発生しやすい局面体感値(目安)
要件定義・構想策定の伴走型提案直前、経営会議前の資料作成月20〜40時間・繁忙期にスパイク
常駐PM・PMO代行型クライアントの稼働ルールに準拠、通年月40〜60時間・慢性化しやすい
SES・技術者常駐型プロジェクトの進捗次第、案件による差が大きい月10〜50時間・案件ガチャの要素あり
プロジェクト請負・納品型納品直前、要件変更が入った直後月30〜50時間・納期直前に集中

表を見ていただくとわかる通り、常駐PM・PMO代行型は『クライアント先の残業文化』をそのまま引き継ぐため、通年で高止まりしやすいというのが僕の観察です。一方で伴走型は、自社の裁量でスケジュールをある程度コントロールできる分、繁忙期と閑散期の差が大きく出る傾向があります。SES・技術者常駐型は、正直『配属される案件次第』という側面が強く、同じ会社でもチームによって体感がかなり異なるという声を、僕は何度も聞いてきました。面接ではぜひ『直近で担当した案件の中で、一番稼働が重かった案件と軽かった案件の差はどれくらいでしたか』と聞いてみてください。この一問で、会社としての平均値だけでなく、案件間のばらつきの大きさまで見えてきます。

3. 会社フェーズ別に見る、激務の波

デリバリー型に加えてもう一つ重要なのが、会社のフェーズです。創業期のブティックファームは、そもそも人手が足りていないため、良くも悪くも一人当たりの業務量が多くなりがちです。ただしこれは『激務』というより『役割が細分化されていない』ことの裏返しで、裁量とセットになっていることが多いというのが僕の実感です。

拡大期に入ると、案件数が増える一方で採用や仕組み化が追いつかず、残業が体質化しやすいタイミングが来ます。僕が過去に見てきた創業5年目前後のブティックファームでは、社員数が20名を超えたあたりから、それまで代表が抱えていた案件マネジメントを中堅社員に権限委譲する過程で、一時的に残業が増える傾向が見られました。逆に上場準備期に入った会社では、労務顧問が入ることで36協定の運用が厳格化され、結果的に残業時間が可視化されて減っていくケースを何度か見てきました。安定期に入った会社は、良くも悪くも仕組みが固まっているため、残業は落ち着く一方で裁量も相対的に小さくなる傾向があります。面接では『直近1年で組織図が変わったタイミングはありますか』と聞くと、いまその会社がどのフェーズにいるのかの手がかりが得られます。

4. 出身別に見る落とし穴——ケースで比較する

SIerで受託PMをされていた方からよく聞くのが、『常駐先の客先常駐と、コンサルの常駐は違うと思っていた』という声です。実際には、常駐PM・PMO代行型のコンサルティングファームは、契約形態こそ違えど、稼働時間の実態はSIer時代の客先常駐とかなり近くなることがあります。ここで、僕が実際に見てきた2つのケースを比較してみます。

出身選んだデリバリー型入社後の体感
SIer受託PM出身のAさん常駐PM・PMO代行型のブティック『肩書きは変わったが、常駐先の残業ルールに従うだけでPM時代と変わらなかった』と後日振り返り
社内SE出身のBさん要件定義伴走型のブティック『事業会社の定時文化に慣れていたので身構えていたが、想像していたほどの激務にはならなかった』

Aさんのケースが示すのは、肩書きが『コンサル』に変わっても、デリバリー型が同じであれば働き方の構造もほぼ引き継がれる、ということです。常駐型のプロジェクトでは、クライアントのシステム障害対応などで休日にオンコール対応が発生することもあります。SIer時代に運用保守を経験された方はこの点に違和感なく対応できることが多い一方、開発や企画中心のキャリアを歩んできた方には想定外のストレスになることがあるため、事前に確認しておくべきポイントです。一方Bさんのケースのように、社内SE出身の方はコンサル業界全体の稼働水準に対して身構えすぎるケースが多いと感じています。恐れているイメージと実態にギャップがあることも、この業界では珍しくありません。

5. 入社前に潰す——確認質問とよくある失敗の対処

では、入社前にこの構造をどう見抜けばいいのか。僕が候補者の方に必ずお伝えしているのは、次の質問を面接や面談でそのまま使ってください、ということです。所要時間の目安は、面接1回分(30〜60分)の中で5問すべて聞き切れる想定です。

  1. 「直近1年で、残業が月45時間を超えた月は何回ありましたか」——頻度を数字で聞く
  2. 「その残業の主な要因は、作業量ですか、クライアントの意思決定待ちですか」——構造要因を聞く
  3. 「案件によって稼働の差はどれくらいありますか」——案件ガチャの有無を聞く
  4. 「直近1年で残業時間の傾向は改善していますか、悪化していますか」——フェーズの方向性を聞く
  5. 「休日のオンコール対応や緊急対応はどれくらいの頻度でありますか」——見えない稼働を聞く

これらは面接官にとっても答えやすい質問です。抽象的に『激務ですか』と聞くより、具体的な数字と局面を聞いたほうが、正直な回答が返ってきやすいというのが僕の経験則です。あわせて、面談後にありがちな失敗とその対処も共有しておきます。よくある失敗の一つは、面接で聞いた残業時間を『会社全体の平均』だと思い込んでしまうことです。実際には部署やチームによってかなりの差があるため、対処法としては『自分が配属される予定のチームやプロジェクトに限定した数字』を重ねて聞き直すことをおすすめします。もう一つの失敗は、内定後にオファー面談で条件面ばかり詰めて、稼働実態の再確認を怠ってしまうことです。オファー面談は、最終的な確認のラストチャンスでもあるので、エージェントを介している場合は面接前にこの質問をエージェント経由で確認してもらうのも有効だと僕は考えています。

(結論)まとめ

コンサルティングファームの激務度は、会社の規模でも知名度でもなく、デリバリー型と会社フェーズの掛け合わせで決まる、というのが僕の結論です。常駐PM・PMO代行型は通年で残業が高止まりしやすく、伴走型は繁忙期にスパイクが立つ代わりに平常時は落ち着きやすい。そして拡大期の会社はひずみが出やすく、上場準備期に入るとむしろ働き方が改善することもある。この構造を知った上で、面接では具体的な数字と局面を聞き、内定後もオファー面談で稼働実態を重ねて確認する。それだけで、入社後のギャップはかなり減らせると僕は考えています。

皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. コンサルティング業界はやっぱり激務ですか?

結論から言うと、激務かどうかは会社の規模や知名度でなく、デリバリー型と会社フェーズで大きく変わります。僕の観察では、常駐PM・PMO代行型は通年で残業が月40〜60時間程度と高止まりしやすく、要件定義伴走型は繁忙期にスパイクが立つ一方で平常時は落ち着く傾向があります。『コンサル=激務』と一括りにせず、面接で残業の頻度と主因を具体的に確認することが重要だと考えています。

Q. ブティックコンサルは大手より激務ですか?

一概には言えず、僕の体感ではむしろ逆のケースもあります。要件定義から伴走する型のブティックは、自社の裁量でスケジュールを組める分、大手の常駐案件より残業が抑えられることがあります。反対に常駐PM代行型のブティックは、クライアント先の稼働ルールをそのまま引き継ぐため、大手以上に残業が発生する場合もあります。規模ではなくデリバリー型で判断していただくことをおすすめします。

Q. 面接で残業時間を聞くのは印象が悪いですか?

結論として、聞き方さえ工夫すれば印象を損ないません。『激務ですか』と抽象的に聞くのではなく、『直近1年で残業が月45時間を超えた月は何回ありましたか』のように、期間と数字を指定して聞くと、面接官も答えやすくなります。僕がお伝えしている質問例を使えば、むしろ実務を具体的に理解しようとしている姿勢として好意的に受け取られることが多いです。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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