面接対策2026-09-28監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

コンサル転職のケース面接対策——フェルミ推定とビジネスケースの解き方

この記事の要点

「東京都内の電柱の本数を、今から3分で概算してください」——面接官にそう切り出された瞬間、目の前が真っ白になったという相談を、僕は月に数件のペースで受けます。

結論から言うと、コンサル転職の面接で「フェルミ推定」や「ビジネスケース」に出会うかどうかは、志望する会社の構造でほぼ決まります。戦略比率が高い会社ほどケース面接は必須に近く、業務改善やIT実装が中心のブティックでは、ケース面接自体が存在しないか、実務経験を掘り下げる構造化面接に置き換わっていることが多いというのが、僕がこれまで見てきた体感値です。

SIerの受託PMや社内SEから転身しようとする皆さまの多くは、「コンサル=フェルミ推定」という漠然としたイメージだけを持って、対策の的を絞れずに苦しんでいます。今日は、そのイメージを一度分解して、皆さまが本当に対策すべきものを見極める話をします。

0. 「対策しなきゃ」と焦って、的外れな参考書を3冊買った話

以前、社内SEから中堅ITコンサルを受けたある方は、書店でケース面接対策本を3冊買い込み、フェルミ推定の想定問答を100本近く暗記して面接に臨みました。ところが実際の一次面接で聞かれたのは、「あなたが担当した基幹システムの刷新プロジェクトで、要件がぶれた原因は何だったと思いますか」という、ごく実務的な質問だけだったそうです。フェルミ推定は一度も出なかった、とその方は苦笑いしていました。

逆に、戦略系ブティックを受けた別の方は、一次面接からいきなり「国内の電子書籍市場規模を推定してください」というお題を渡され、その場でホワイトボードに向かうことになりました。同じ「コンサル転職」という言葉でくくられていても、面接で問われるものはここまで違います。

1. そもそも「ケース面接」には2種類ある——フェルミ推定とビジネスケース

まず整理しておきたいのは、「ケース面接」と一括りにされているものの中に、性質の異なる2つのタイプが混在しているという点です。

ひとつはフェルミ推定。「日本国内の自動販売機の台数は?」のように、一見答えの出ない数字を、論理的な分解と仮定の積み上げで概算する練習問題です。答えの精度そのものより、分解の筋道と仮定の置き方の妥当性が見られています。

もうひとつはビジネスケース。「あるアパレル企業の売上が3年連続で落ちている。原因と打ち手を考えてください」のように、実在しそうな企業の経営課題を渡され、構造化して打ち手まで示す練習問題です。こちらは業界知識や実務感覚がそのまま武器になる領域で、SIerや社内SEでの実務経験が生きやすいのはこちらのタイプだと僕は考えています。

この2つを区別せずに「ケース面接対策」とひとまとめに勉強してしまうと、対策の的が絞れず、時間ばかりかかって自信を失う、という悪循環に陥りやすくなります。

2. なぜ会社によって「ある・ない」が分かれるのか——構造で読む

ケース面接の有無は、会社の気まぐれではありません。その会社が戦略提言中心なのか、業務改善中心なのか、IT実装中心なのかという「戦略・業務・ITの比率」と、常駐型で長期伴走するのか、短期プロジェクトで入れ替わるのかという「デリバリー型」の掛け合わせで、かなりの精度で予測できるというのが僕の見立てです。

目安として、次のような傾向で整理できます。

会社の傾向面接で問われやすいものSIer・社内SE出身者の勝ち筋
戦略比率が高い(提言中心)フェルミ推定+ビジネスケース両方型を覚えて場数を踏むしかない領域
業務改善が中心(業務コンサル)ビジネスケース中心、フェルミ推定は稀業務知識をそのまま打ち手に転用できる
IT実装比率が高い(PMO・システム導入)ケース面接なし、実務経験の深掘りが中心プロジェクト経験の言語化がそのまま武器になる

この表はあくまで僕がこれまでの相談で見てきた傾向の整理であり、会社ごとに例外は当然あります。ただ、「コンサルを受けるなら全社フェルミ推定対策が必須」という思い込みだけは、まず外していただきたいと考えています。特に中小のITコンサルは、知名度がない分だけ選考プロセスも実務寄りに設計されていることが多く、実務経験そのものを厚く語れる皆さまにとってはむしろ有利な土俵だったりします。

3. フェルミ推定の解き方——5ステップで型に落とす

とはいえ、戦略比率の高い会社を志望する場合、フェルミ推定の型は最低限身につけておく必要があります。僕がおすすめしているのは、次の5ステップで固定して練習する方法です。

  1. 分解:お題を、掛け算で表せる要素に分ける(例:市場規模=人口×利用率×単価×頻度)
  2. 仮定:各要素に、根拠のある概数を置く(「日本の人口は約1.2億人」など、公的統計に近い数字を土台にする)
  3. 計算:声に出しながら計算し、面接官に思考過程を見せる
  4. 検証:出てきた数字を、身近な感覚と照らして違和感がないか確認する
  5. 示唆:数字を出して終わりにせず、「この数字から何が言えるか」を一言添える

この5ステップを、10問ほど声に出して練習すると、多くの方は型を体で覚えられます。僕の体感値では、1日30分を2週間続ければ、初対面のお題にもある程度対応できる状態になる方が多い印象です。逆に、想定問答を丸暗記する勉強法は、少しひねられただけで対応できなくなるためおすすめしていません。

4. ビジネスケースの解き方——SIer・社内SEの経験は「素材」になる

ビジネスケースで評価されるのは、フレームワークを知っているかどうかではなく、実務の解像度です。ここはSIerの受託PM経験や社内SEとしての当事者経験が、そのまま強みに変わる領域だと僕は考えています。

例えば「基幹システムの刷新プロジェクトが遅延している。原因と打ち手を考えてください」というお題が出たとします。フレームワークだけを学んだ人は「要件定義・体制・スケジュールの3つの観点で」と型どおりに切り分けて終わりがちです。一方、実際に基幹システムの刷新を経験した方は、「要件がぶれる背景には、現場部門とIT部門の評価軸のずれがあることが多い」といった、体験に基づく一段深い仮説を出せます。この差は、面接官にとって非常に分かりやすいシグナルになります。

皆さまが対策すべきは、フレームワークの暗記ではなく、「自分の実務経験を、初対面の面接官にも伝わる言葉に翻訳する」練習です。具体的には、過去に担当したプロジェクトを3つ選び、それぞれ「課題は何だったか」「自分は何をしたか」「結果どうなったか」を3分で話せる形に整理しておくことをおすすめしています。

5. 落ちる人に共通する3つの原因と対策

ここまでの相談の中で、僕が繰り返し見てきた「落ちるパターン」は、大きく3つに集約されます。

1つ目は、フレームワークを覚えることを目的化してしまうパターンです。3C・4Pといった型を披露することに意識が向き、肝心のお題への答えが浅くなります。対策は、フレームワークは「思考の補助線」に留め、必ず自分の言葉で結論を先に言い切る練習をすることです。

2つ目は、沈黙して考え込んでしまうパターンです。ケース面接は正解を当てるテストではなく、思考のプロセスを見せる場です。分からない部分があっても、「ここは仮に〇〇と置いて進めます」と口に出しながら進めるだけで、印象は大きく変わります。

3つ目は、会社の構造を調べずに、全社一律の対策で臨んでしまうパターンです。先ほどの表のとおり、IT実装比率が高い会社であれば、そもそもケース面接自体が存在しない可能性が高いのに、フェルミ推定ばかり練習して、肝心の実務経験の言語化がおろそかになっているケースを何度も見てきました。求人票やエージェントからの情報で、志望先がどの傾向に近いかを先に確認しておくことが、結果的に一番効率のよい対策になると僕は考えています。

(結論)

ケース面接は、コンサル転職における共通試験ではありません。会社の戦略・業務・ITの比率次第で、出るものも出ないものも変わる、構造に紐づいた選考プロセスの一部です。フェルミ推定の型を身につけつつ、皆さまが本当に厚みを持たせるべきは、SIerや社内SEとして積み重ねてきた実務経験を、初対面の面接官にも伝わる言葉に翻訳する力だと僕は考えています。

皆さんいかがでしたでしょうか。ケース面接という言葉に構えすぎず、まずは志望先の構造を確認するところから始めてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. コンサル転職の面接では必ずケース面接がありますか?

いいえ、必ずあるわけではありません。戦略提言中心の会社ではフェルミ推定やビジネスケースが出やすい一方、IT実装比率が高い会社では実施されず、実務経験を深掘りする構造化面接に置き換わっていることが多いというのが実感値です。志望先の構造を先に確認することをおすすめします。

Q. フェルミ推定の対策にはどれくらいの期間が必要ですか?

目安として、1日30分の練習を2週間ほど続けると、初対面のお題にもある程度対応できる型が身につく方が多い印象です。分解・仮定・計算・検証・示唆の5ステップで固定して練習し、想定問答の丸暗記に頼らないことが重要です。

Q. SIerや社内SEの実務経験はケース面接で通用しますか?

はい、特にビジネスケースでは実務経験がそのまま強みになります。フレームワークだけを学んだ人より、実際にプロジェクトを経験した人の方が一段深い仮説を示せるため、過去のプロジェクトを3分で語れる形に整理しておくことをおすすめします。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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